これまでのトピックス

低出力レーザ療法と鍼治療

ー1mWレーザによるダブルブラインドテスト結果ー

西條 一止
筑波技術短期大学学長 医学博士
写真:第12回日本レーザ治療学会の開催された広島"

 鍼の刺激によって起こる反応は、一つは局所の反応、それとは別に、全体の調節力を高めてくる反応があります。
 これは、古典的には本治法といい、反応は、刺激が与えられてから
1分から3分、場合によっては10分位経過してから
 起きてくるという特徴と、リバウンドしないという特徴を持っております。この二つの反応の話をいたします。


第1図は1mWレーザを左肩に照射したサーモグラフィーの映像ですが、両側性に反応が起こるというのが特徴です。ですから中枢神経系まで上がり、降りてきている反応です。これは鍼刺激は勿論、痛み刺激によっても精神的緊張によっても起こります。

次の図は合谷に鍼刺激をした時の刺激以前と直後をサブストラクションしたものですが、鼻とお腹に直後に反応が起こります。次の図は
3分後、6分後の反応をしめしたものですが、同様の反応は、痛み刺激でも灸刺激でもおこります。

次の図は心拍数の減少を示した
5例ですが、雀たく刺激で減少がおこります。刺激を止めるとすぐ元に戻るか、1分ほど減少が継続するかと個体差がありますが、減少するか、起こらないかで増えることはありません。痛み刺激を与えると心拍数は増加します。鍼刺激と痛み刺激は、末梢を見ている限りでは差がありませんが、心臓にあたえる影響は全く逆です。

自律神経遮断剤を使って、鍼刺激の反応を調べてみました。先ず交感神経のベータ状態系を遮断すると心拍数の減少が起こります。副交感神経系が高まるという減少がおこっており、これが非常に重要です。これは皮膚刺激による反応で、全体の調節機能を高めるという反応にかかわって来ます。こんどは先に副交感神経系を遮断しました。鍼を刺すと減少が起こります。ベータ状態系を遮断すると反応が起こらなくなります。交感神経のベータ状態系を抑制すると起こる反応であることが判ります。骨格筋まで鍼を刺し起こる反応は、交感神経ノベータ状態系を抑制する反応と、副交感神経を高めるという二つの反応をおこすことがわかります。交感神経のベータ状態系を抑制する反応は、筋刺激で起こり、副交感神経を高めるという反応は、皮膚皮下刺激で起こります。

mWレーザを使い、皮膚皮下刺激により副交感神経を高め、それに引きずられて交感神経が高まり、自律神経機能を高めるという実験を行いました。1mWレーザの刺激は、鍼を使い1−2mmしか刺さず、雀たく刺激を行う場合に相当します。これは皮膚下刺激で、筋刺激をしないということです。 
次の図は、
1mWレーザでダブルブラインドテストをした結果です。パソコンで管理をし、レーザを出したり出さなかったりします。照射群では、副交感神経が高まり、交感神経も高まるという反応が、非照射群に対し、有意に起こって来ます。
特に、1
mWレーザは、座位で、呼気時に刺激すると、副交感神経を高めるという反応を起こします。1mWレーザを刺激した場合、腰部の可動域を大きくするという反応を起こします。レーザの非照射群は変化はありませんでした。腰部の骨格筋の緊張を緩めている事が、わかります。照射部位は手首の外関というつぼで、呼吸10回分刺激しております。

次の図は全身の血液循環を見たものです。足が冷えており、手首の外関をレーザで刺激すると5分後に足の血管が開き、10分後20分後には全体のバランスがとれた良い状態になって来ます。次は別のケースですが、矢張り足が冷えております。5分後足の血管が開き、20分後に同じような状態になります。足の血管が拡張し難いという状態を改善する反応ですが、副交感神経機能を高め、交感神経機能が高まるという現象からは説明できません。自律神経機能の全身の状態を調節するという機能が大きくなって、収縮を緩めていると考えられます。次は足が冷えていないものです。血管が開きすぎていると思われる症例では、逆に温度が下がって来ます。バランスの良い症例では殆ど変化は起こりません。低出力レーザは、異常に成っているものを正すという反応を起こしています。

次の図は、深呼吸をさせた時の心拍数の変化です。副交感神経機能を遮断すると、この反応は無くなります。次は呼吸曲線です。吸気時は心拍数の増加が起こり、呼気時は減少します。吸気時は副交感神経機能が抑制され、呼気時は高まるというリズムです。先ほどの刺激は息を吐くときに刺激します。生体内で副交感神経機能が高まるという状態と同期して、生体の調節力を高めるという反応を起こしていると考えられます。

そこで、今の全体の調節力を高めるという反応と、局所刺激を前後させ、手首刺激の全体の調節力を高めるという反応と局所刺激の関係を調べてみました。背中の右側を刺激し、対象部位の左側の反応を見ました。すると次のような事が起こります。

全体の調節力を高める刺激をし、局所刺激をした場合、もう一つは、局所刺激をし、全体の調節力を高める刺激をした場合、直後では変わりませんが、1分後、明らかに変わって来るのは、3分後です。上昇してくるという反応は、局所刺激を後でやった場合と明らかに違います。後で全体の調節力を高めるという刺激をした場合は、いつでも起こるわけではなく、正常な状態から変異した場合のみ起こります。局所刺激をあらかじめしておいた場合の方が、反応が良いという特徴があります。刺激の反対側は全体の調節力を高める刺激をしても反応が悪いという特徴があります。この全体の調節力を高めるという働きが、伝統的な鍼の大きな治療メカニズムの一つであり、1mWという低出力のレーザが同様の働きを持っている事が確認できました。
これは高い出力のレーザでは絶対に起きない反応です。


(第12回日本レーザ治療学会での講演を収録したものです)
第1図
第2図
第3図
第4図
第5図
第6図
第7図


¤テニス肘の低出力レーザ治療
¤腰痛症の低出力レーザ治療
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¤慢性関節リウマチのレーザ治療(1)
¤低出力レーザ療法は、糖尿病性動脈症の優れた治療法
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慢性関節リウマチにおける低出力レーザの治療効果
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