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リンパ浮腫の低出力レーザ治療

腋窩、胸部組織及びそれらの関連するリンパの構造に対する、手術、放射線治療或いはその他の障害から起こる、上腕部問題の解決のための対策案

NB.ピラー
フリンダース メデイカル センター
リンパ浮腫診断診療所所長 医学博士

写真:オーストラリアの日の出

腕部の慢性リンパ浮腫は、乳がん治療に際し発生する合併症で、腫瘍のタイプ又は進行度とは無関係に発生し、腕は通常の150-200%に膨張し患者に非常な苦痛を与えますが、南オーストラリアのフリンンダーズ大学病院では、低出力レーザ治療を7年前から実施し、好成績を収めている。低出力レーザ療法を始めた、NB.ピラー博士の論文を紹介します。

はじめに

体の全ての部分は、深部、及び体表部のリンパシステムを持っています。どんな対策又は治療プログラムにおいてもこれを熟考することは、重要です。

それぞれの腕には、6つの主要なリンパ領域があります。前腕に3、そして上腕に3領域があります。各領域は、一連のリンパ収集器によってリンパ液が排出されます。これらは、あなたの体の筋肉上に横たわる結合組織の上に層をなしている事が見出されます。これらの排管は、主に、腋の下領域でリンパ節へ流れ出ます。しかし、そこにはいくつかのバイパスがあります。
左側の腕では、腕および胸部排管は左鎖骨下静脈および腋窩静脈へ排出されます。右側の腕及び胸部では、排出は、右の鎖骨下静脈経由です。
リンパ節の外科的除去は、腋の下で腕部リンパ液を排出するいくつかのリンパ収集器を破壊するか障害を与えます。補助的放射線療法は、更にこれらの収集器に対するダメージを引き起こし、 より微細なリンパ毛状ネットワークを傷つけることになります。 放射線療法は、それが引き起こす繊維硬化の結果、新しい毛細リンパ管の更生及び、リンパ排出のバイパスの形成を遅延させる可能性があります。胸部、リンパ管が鎖骨下静脈に排出する場所への放射線療法は、これらの導管を傷つける為、治療の際に注意する必要があります。
組織が異常に蓄積した液体に満たされていないか、健全な状態であるか否かは、リンパ負荷(組織からの排除を待っている液体量)とリンパ液の輸送力(待機している液体を排除する能力)のバランス点に依存します。

負荷が輸送能力を超えた場合、リンパ液は組織に蓄積され、局所の膨張が起こります。これは、重苦しさ、緊張、回転運動障害にともなう不快感をともないます。いくつかのこれらの問題、しびれ、ヒリヒリすること、および可動域障害は、放射線療法および外科手術と関係がある可能性があります。
しかし、もし腕部(および他の影響された組織)が治療を受けず放置されるか不十分なケアを受けた場合、不十分な排水に影響される部分(胸部を含むかもしれない)は、単独のリンパ領域からほとんどの腕部、あるいは全ての腕部へ広がるかもしれません。
もし体液がある時間以上組織に滞留した場合、組織に間質下で線維芽細胞成長因子とマクロファージの過剰な活動で、慢性的な炎症が発生します。現在実験的な調査下でありますが、この過程に影響するかもしれない他の多くの因子があります。
流体が蓄積される為には、手術及び放射線療法、そして組織の進行的繊維硬化がリンパ液の輸送力を減少させ、輸送能力を超えたに違いありません。リンパシステムは非常に大きな予備力を持っており(正常な休息時の能力の90パーセント)、リンパ浮腫が目立つようになる前に、如何に大きな破壊又は障害が起こっているかを理解する必要があります。
患者は、彼らが注意深い家庭でのケアにより、リンパシステムの負荷に重要な影響を及ぼすことが出来ることを理解しなくてはいけません。患者教育、患者による理解及び治療プログラムは、連携して行われるべきです。

疾病管理

これは、患者自身がすることが出来るものです。理想的には、それが治療をより効果的なものにするので、治療の前に、これらの点につき、十分に注意を払う必要があります。
体重管理はとても重要です。太り過ぎの人は、ダイエットの指導を受けるべきです。BMIは、体重管理が必要とされるかどうかの良い指標です。
スキンケアは非常に重要です- 皮膚を通じた感染(特に皮膚が乾いて亀裂が生じている場合)は、リンパ液増加の主原因となります。
傷の手当ても決定的に重要です。どんな感染も、ただちにリンパ液の増加を招き、リンパ浮腫の状態をいっそう悪化させるでしょう。
ダイエット管理は重要です。これは通常の常識的健康ダイエット、水分の適切な摂取、塩分の低摂取、及びアルコールの適度の摂取を意味します。食事からの長連鎖脂肪の除去は、これも重要です。
手足の等尺、等張性筋運動は、定期的に行う必要があります。いくつかの最も簡単な運動が、最も良いようです。たとえば、息を深く吸い込んでいる間に、腕をゆるやかに上に伸ばし筋肉を緊張させるストレッチ運動。もう一つの良い運動は、大極拳運動プログラムの一部分であるハス花開きです。
これらの運動は、以下のように機能します。深い吸気は、胸部の領域でマイナスの圧力を作ります、リンパ液は、圧力勾配の結果、他の領域から収集管、および胸部の導管に沿って胸部に流れます。 筋肉の収縮は組織圧力を増やし小リンパ管へ流体を強制するのを手伝い、ここでリンパ管本来のポンプを使った活動がリンパ液を体の中心部は運び、鎖骨下静脈の結合部でリンパ液を最終的に導管のシステムへ流入させることになります。
水泳は、手足に対する外部の圧力のためにリンパ液が導管に集まるのを助け、又、筋肉の動きによって引き起こされる組織圧力の変化のために良いと思います。

リンパ浮腫の治療

繊維蓄積の停止を助け、現存する繊維の除去を促進することは、とても重要です。繊維化は、組織中の潜在的炎症過程の結果として起こることと同様に、手術および/または放射線療法に関係があるかもしれません。
低レベル・レーザー治療は、今まで多くのケースでこれに有効であることを示して来ました。

腕部のためのレーザー治療

腕を上に上げるか、既に述べた等尺、緊張運動により、出来るだけ残っている体液を排除する。
レーザー使用を開始する前に、自分で行うか、あるいは友人にマッサージをして貰う事は、これはまだ証明されてはおりませんが、リンパ液排除を助ける可能性があります。マッサージは、繊維および傷跡が柔らかくなることで、組織中のリンパ液のより容易な流れを可能にし、後々役に立つ可能性があります。
外科の傷跡が残る領域に、レーザーを指定された時間、照射して下さい。(両側からあるいは片方だけ)。これらの傷痕は、激しく硬化された部分です。レーザーは傷跡に沿って照射するのが良いのか、傷痕をまたいで照射するのが良いのかは未解明です。
放射線療法を受けた部分にレーザーを照射して下さい(組織の変化から明らかですが、正確な場所を患者に聞いて)。この部分へのレーザー照射は、もっとも少ない時間で結構ですが、しかし、全体のエリアをカバーするよう気をつけて行うべきです。
胸の正中線に沿ってレーザーを照射し、体の左右のリンパシステムが繋がるようにして下さい。
腕部の主要なリンパ循環系が見出だされる、前腕部の上部および下部にレーザーを照射して下さい。これは正常に機能している導管では起こりませんし、証明もされておりませんが、この動作は、リンパ液の流動性を高める可能性があります。しかし乍ら、レーザーは、正常に機能している組織に比べ、機能していない組織に対し、異なって作用する事が証明されており、リンパ液の流動性の問題は議論の余地のあるところです。
自分で緩やかなリンパ液排除をするよう薦めて下さい。これはリンパ液がすでに排出された領域にリンパ液を排水させるという原則に従うということを確認して下さい。これは影響された腕部、およびその他の影響された患部から離れた場所から第1にリンパ液を排出することを意味します。この処置は、レーザー使用の前に専門家がやって見せる事をお勧めします。

レーザーの出力及び照射時間

今のところ、我々は、これについては確信がありません。レーザー照射量と効果の因果関係についてはいくつかの証拠があります。すなわち、より多くレーザーを照射した方が良い結果が得られる(頂点に達するまで、それ以降は治療を続けても効果が減衰する)。レーザーはスイッチを入れる働きをし、一旦スイッチが入れば、それ以上レーザーを照射しても、差がないという意見もあります。それにも拘わらず、レーザーがリンパ浮腫の手足のサイズ、感触および組成を改善するために非常に効果があることは疑う余地はありません。

レーザー治療器を自宅に持ち帰える患者に対しては、もし繊維症が明白な場合は、最初の2日間レーザーを一日に二回使用し、それ以降は毎日一回使用することを薦めました。レーザーは、最も硬化の激しい地域に最も多く使用し、手足のその他の部分には少し照射する必要があります。
レーザー治療の前に、高血圧、甲状腺異常などの治療が行われている事を確認する必要があります。治療が行われていないと、レーザー治療の効果が半減する可能性があります。 リンパシステムへの負荷を減らすあらゆる努力をする必要があります。 レーザー治療を如何に効果的に行うかについては、“リンパ浮腫腕部の認識、治療、ケア”ニールBピラー著の小冊子、フリンダース医療センター、フリンダース外科腫瘍診療所で入手可能、をご覧下さい。

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