低出力レーザ治療事業が衰退したことを実感した。

平成20年6月28(土)、29日(日)、有楽町の東京フォーラムで第20回日本レーザ治療学会が開催され2年ぶりに出席した。20年前、低出力レーザ治療が日本で厚生省により正式に認可され、本格的な普及に入った時期には、低出力レーザ治療器の製造、販売に関わっていた会社は10 社以上あり、いつも展示コーナーを賑わしていたのが、今年の展示は、低出力レーザ治療器はM社一社だけ、もう一社は赤外線治療器のT社だけになってしまい、演題もM社の新型レーザ治療器の使用体験の発表とT社の治療器の治療体験発表が殆どで、誠に寂しい限りであった。これに反し、レーザ治療効果の機序解明については、教育講演が4題もあり、特に、日本大学松戸歯学部生化学・分子生物学、我孫子 宣教授の“機能ゲノム科学応用による光照射の生物学的効果の機序解明”は秀逸で、ヒト膝関節リウマチ滑膜細胞を用いた病態モデルへの光照射後、RNAを回収し、Affimetrix GeneChipを用いて解析し、更に、Ingennuity Signal Pathway Database(IPA)ツールを応用して、光照射による抗炎症作用が、DNAレベルで坑炎症遺伝子群の発現により証明されることを示したものである。

日本の医療費高騰削減の切り札を失ったのではないか!

20年前、レーザ治療学会の会員の半数は、レーザ治療効果は熱効果で、光が生体に働いて作用するわけは無いという意見が強かった時代を振り返ると、医学研究の進歩をまざまざと感じさせられた。当時、学会外の先生方は、低出力レーザ治療はプラセーボ効果だ、気のせいだといわれていた頃に比べれば、隔世の感があった。それにしても残念なことは、機序がそこまで解明されたのだから、メーカーも100社に増えているのが、普通であろう。日本以外の国では、皆、そのような状況になって いる。もし、メーカーも100社に増え、価格も安くなり家庭用のレーザ治療器が一家に一台あれば、現在、大問題になって日本国の命運を別けるかもしれない、高齢者医療費の増大、後期高齢者医療制度の問題など、一挙に解決してしまう。何故なら、加齢とともに増える疾患の多くは関節、腰、足、筋肉、などの痛み、腫れで、整形外科、接骨院、鍼灸院がこれで大繁盛し、政府も診療費を抑えようと躍起になっているのが現状であるが、低出力レーザ治療器は数mWの短時間の照射で、これらの急性、慢性の痛みを手軽に除去してくれるからで、老人の 病院通いの大半は無くなってしまう。又、免疫力を高める効果があるので、風邪の治療、癌など免疫力の低下ともに発生する病気の予防にもなる。更に、われわれが平成3〜5年にかけて動物実験と臨床治療で治療効果を確認して、毎年、日本レーザ医学会、日本レーザ治療学会に報告した認知症の治療も、現在、ごく小数の先生方が実際の治療に使用し効果を上げているが、家庭で手軽に出来ることになる。なぜ、世界で日本国だけ、一時はレーザ治療ブームになったものが、消え去ろうとしているのか

責任を取って欲しい。

最大の理由は、平成8年の厚生省の規制緩和中止決定に尽きる。当時、日本レーザ医学会と日本レーザ医用協会が合同で、当時の厚生省に規制緩和を陳情し、厚生省も中曽根内閣の規制緩和政策の目玉として、低出力レーザ治療器をトップ項目に取り上げ、中央薬事審議会に薬事承認の条件であった二重盲険法の廃止を答申し、関係者一同、これで、わが国の光治療の未来が開けると期待していたが、平成8年7月に開催された中央薬事審議会において、某教授の、低出力レーザ治療は機序が未だ解明されていないのであるから規制を緩和する必要ないというタダ一人の反対で没になってしまった。これ以降、規制は緩和どころか元に戻ってしまい、メーカー各社はやっていられないということで、あいついで、離脱してしまった。皮肉なことに、平成8年当時、低出力レーザは生体細胞に実際に吸収され、神経の興奮を抑制し、痛みを除去するとか、 血管の平滑筋に働いて血管を拡張し、血液循環を改善するとかの発表は日本レーザ医学会、日本レーザ治療学会、日本ペインクリニック学会、東洋医学会などで既になされており、レーザ関係者の間では、ほぼ、常識になっていた。某教授の不勉強の為、日本の医療ビジネスの一角を崩壊させ、医療費膨張を大幅にカットできる切り札を封印してしまった責任は重大である。医師会もOKして、厚生省もOKしていた政策がたった一人の教授の反対で没になるという、全員一致でなければNOというシステムがおかしい。官僚制度の問題は多々あり、日本国崩壊の危機の最大の原因になっているが、当時の、日本レーザ医学会会長、故井上鉄三先生のご尽力で、日本でもグローバルスタンダードな政策決定が潰えたマイナスがいかに大きかったかを痛感している。